第55回 常総きぬ川花火大会・花火写真コンテスト
開 催 日:令和元年8月11日(日)
応募者数:87名
応募点数:160点
審 査 員:小野里公成[花火写真家]
講 評
今回も多くの応募作品を拝見でき、まことに嬉しく思います。
上位応募作は、撮影から現像、レタッチ、プリントに至るまで一貫して高い技術となにより、最終の完成を思い描いた処理が貫かれているとみとめられ、嬉しくなりました。私は応募作の1点、そのプリントされた画面内でしか判断できませんが、渾身の1枚を見せていただくのはいつもながら身の引き締まる思いです。1時間の花火大会の中で、なぜか同じシーンの応募がたいへん多く、僅差の優劣で順位付けするのはたいへん苦心しました。
目の前に展開する花火を高性能なカメラでただ撮るだけではなく、地の利を活かし、そこに撮り手の考え方や作品の出来上がりイメージとかそうした個性のエッセンスが加味されてこそ人とは違う作品になります。私もまた同じ時を同じ場所で過ごしたので私とは違うそうした思わぬ個性を見かけると楽しくなります。
上位作品で感じたのは、撮影も現像も長けている人ほど、露出オーバーにならないように、または暗部がつぶれないようにとやり過ぎな後処理をしてしまうことです。このコンテストでは最近流行のド派手な極彩色カラー仕上げは少ないですが、その代わりにどこも白トビにならず、暗い部分も全て綺麗に見えている。そうした作品が多いことに気がつきました。綺麗ですが、色のメリハリ、明るさのメリハリ、そこから導かれる感動のメリハリが弱くなりどこも同じ調子でのっぺりとしています。
「そこはそのように見えたのか?」目映いくらいに明るい、対照的に闇に沈む。人の眼はそのように反応するところを撮影時や現像処理で見えるようにする。不自然か自然かの境界線が難しいところです。進化する花火と花火写真を見据えて私もまたデジタル時代ならではの作品作りの妥当性について考えさせられました。
大賞
茨城県知事賞
上田 悠平(京都市)
寸評
いつもながら綺麗な作品です。瞬間の美を結晶化した、そのようなタイトルでしょうか。画面の納まりも良く破綻も無い。色彩も相まってこの作品から感じるのは静寂。対照的に、全てが良く見えているせいか薄暗い花火会場で、花火や夜店の灯りに照らし出される、安心感とかほの暖かさ、そうした情緒感や会場の喧騒、花火を見てドキドキするような高揚感が弱まったかなと感じました。
特選
茨城県議会議長賞
嶋田 幸司(稲敷市)
寸評
これはまさに花火大会の晩ですね。花火の灯りに照らされて多くの客がそれを見上げている臨場感と、光の強さ弱さのバランスが良い高揚感を生み出しています。どうしても多くの写真愛好家が、同じ場所に集まり、同じ瞬間を撮ることになるわけですが、そこで居場所の条件を活かすことができるか?それも個性で作品の強みだと思います。
準特選
茨城県営業戦略部長賞
古川 靖史(朝霞市)
寸評
錦色がまさに黄金色に美しく出ています。黄金とラピスラズリの青。古代エジプトの装飾にも似て豪奢な印象です。構成としては若干右寄りというかトラの根元が中央にくるくらいのフレーミングだとバランスが良いと思います。上が切れていますがその分客席が入って良しというところです。
準特選
茨城県観光物産協会長賞
木村 翼(藤岡市)
寸評
ダイナミックでここを見せたいという意図が明白です。縦位置というのも最適でした。一瞬で咲いて消える千輪花はまさに瞬き禁止だと思います。
入選
常総市長賞
大島 正美(横浜市)
寸評
相変わらずバランスの良いプリントです。橋と水のある風景としても素晴らしい出来だと感じました。花火に関しては若干中心部がアンダー目でしょうか。グランドフィナーレとしては圧倒感がいまひとつかなと思います。
常総市議会議長賞
中村 廣勝(越谷市)
寸評
この色合いに幸せを感じたのですね。素敵な1枚だと思います。下部の客席部分をもう少し入れて同じように幸せを感じているであろう客席のディテールを出したいところです。縦位置で切ってもその点ではそうとういい具合だと思います。
常総市教育委員会教育長賞
上田 龍太郎(伊豆の国市)
寸評
レンズの画角と場所を活かして、動きの在る花火の星とともに躍動を感じる作品です。全体にややアンダーなのが惜しいです。ここは客席部分は工夫して抽出したいところです。
常総市観光物産協会長賞
岡 広樹(江南市)
寸評
縦長の用紙サイズに、実に前景、客席、花火と綺麗にまとまってそつなく納められています。上手です。同時に綺麗にまとまったことと、全ての開花が同じ調子で仕上げられたことで、迫力とかワクワクとか、驚きとか花火のそういうエネルギーが弱くなった感じです。
常総きぬ川花火大会会長賞
八田 和香(松戸市)
寸評
横長の用紙比率を一杯にワイドな扇打ちの全貌を取り入れていい瞬間をモノにしています。全体バランスとしては右寄りなので上で開いている花火群が中央になるように構成すると良いと思います。加えて下部には客席部分を入れたいです。
佳作
桜井 孝(常総市)
寸評
うん、こういうのが見たい、と膝を打つ、そういう場所感です。家々の屋根が浮かび上がりそれぞれの家庭から屋上から同じく花火を見ているのだろうとかそうした「暮らしと共に地域に在る花火」を感じます。花火の写りはいい具合ですが、せっかくですからもっと屋根の下の方を入れたいところです。
黒田 一史(結城市)
寸評
タイトルが素敵でした。中心部全体にややオーバーでピンク色の花に目が行くのを遮っている感じです。その分川面や橋などの写りが綺麗に出ました。
桑島 奨(世田谷区)
寸評
ベストな瞬間をよくとらえています。迫力在る物量なのに目映さも感じないのはハイライトを抑えたせいなのかどうか。それと横長の用紙では左右の空きが気になります。色の傾向としては赤っぽいです。
武田 浩(富谷市)
寸評
思い切った切り取りでダイナミックです。明るい部分は明るく見えるようにメリハリのある処理をしないと全体にアンダーで迫力が薄いと感じます。もう少し下の客席部分が欲しいですね。
古田島 俊輔(柏市)
寸評
豊水橋と鬼怒川の佇まいがよく描写されて雰囲気が在ります。夜空の黒の締まりが弱くて花火が少し引き立ちませんでした。この用紙の縦横比ですと、左右の空きが小さく見せてしまっています。